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「アハハ、ほら斎藤くんびっくりしちゃってんじゃーん。謝りなよ高崎せ・ん・ぱ・い」
にやにやと笑みをこらえきれないといったような寮長の言葉に高崎先輩は舌打ちするとそっと目を逸らした。
「、ビビらせるつもりじゃ…なかった。悪い」
「先輩呼びされるの嬉しかったんだよねー?ぶふっ」
「ってめぇは黙ってろ!!」
ゴンッとすごい音をたてて再びゲンコツをくらった寮長はよっぽど痛かったらしく静かに床に沈んだ。
…御愁傷様です。
高崎先輩の顔は怒りからか照れているのかほんのり赤みを帯びている。
「言われ慣れてねえから、聞き間違いかと思って…怒ったわけじゃないから、安心しろ。好きに呼んでくれていい」
「ふ、はは、じゃあ良平先輩でもいいんですか?」
「な、っ…りょ、…」
ゆっくりと、怖がらせないように言葉を選んでくれているのを感じていい人だなあと思うと同時に可愛らしい人だとも思った。
つい反応が気になって名前で呼んで見ると言葉にならない声を発してフリーズしたように動かなくなってしまう。
「す、好きに呼んでくれて構わない……かえっ、帰る!」
「あっ、せんぱ…」
呼び止めようとした声はバタンッと勢いよく閉まった扉の音で遮られる。
良平先輩は言葉を発したかと思うと顔を真っ赤にして走り去ってしまった。
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