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その指先へ視線を向けると、ものすごい形相で此方へ向かってくる生徒の姿が。
「ちょっと ちょっと。報告受けて来てみればどういう状況ですかこれ。…説明してもらいますからね伊織様!」
「何しに来たんですか。今は忙しいので後に」
「忙しいのはこっちです!!時間外労働もいいとこですよ!こちらへの説明が最優先です!!!」
ずんずんと伊織に詰め寄る小柄な生徒は、あの口の達者な伊織を圧倒する勢いで言い募る。
周囲含めおれはあっけに取られてぼやっと眺めていたが、銀髪くんにぐっと腕を引かれた。
この隙に帰っちゃおってことらしい。
その作戦は成功し、喧騒を離れてひんやりとした廊下に出るとほっと息をつく。
あの人、すごい剣幕だったけど誰だったんだろうか…
「あれは副会長の親衛隊隊長。副会長よりはまとも。」
口に出していなかったはずだけどおれの疑問に答えるように銀髪くんが呟いた。
ほえーー親衛隊…本当にいるんだ…
「ありがとう。…えーっと、そういえばおれ、なんて呼べばいいかな?」
いまさらだけど!
と連れ出してくれた銀髪くんにお礼を言うと彼はこてんと首をかしげる。
「なんて呼ぶ?」
「うえ!?うーん、…ぎん、とか?」
まさかの聞き返されてしまったので考えてみるけど、これから同室でやっていくわけだし苗字じゃ味気ない気がする。
ぎんじ、だからギン。
安直と言われれば返す言葉もありませんが!
どうかな…と銀髪くんの様子をおそるおそる伺うと目をまん丸くしていた。
「…ぎん。」
「う、うん…だめかな?」
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