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「…ごめんな、セツ。こうなった姉さんは止められないから……明後日、迎えを寄越すよ」
慧くんは諦めたような顔でそう言うと俺の頭を撫でた。そうだよな…慧くんはこの母さんの弟なんだ。どれだけ振り回されてきたのか想像もつかない…
すると突然軽快なメロディーが流れ始める。慧くんが悪い俺だ、と言って携帯を確認すると顔を顰めた。
「…だいじょうぶ?慧くん」
「、ああ悪い…ちょっとすぐ帰らなくちゃいけなくなった。姉さん茶、ご馳走さま」
「あらあら、忙しそうねぇ」
そう言って慧くんは立ち上がる。
せっかく久々会えたのにもう帰っちゃうのか…
少し寂しく感じていたのが顔に出てたらしい。
「ふふ、そんな寂しそうな顔するなよ。明後日にはまた会える」
「、わっ」
慧さんは嬉しそうに笑って、俺の頬にひとつキスを落とすとまたな、といって颯爽と帰っていった。
前に慧くんがキスは挨拶だから普通だって言ってたけどいきなりされるとびっくりするからやめてほしい…嫌じゃないけど!
「甥っ子溺愛萌え!慧ちゃんグッジョブよ!」
いつの間用意していたのかカメラを掲げて悶える母さんのテンションには 俺一生ついていけないなって改めて感じた…、
それからは荷造りをして、母さんに黒い毛玉のようなカツラを渡されるわ、BL本を読まされるわ、持たされそうになるわで忙しくてあっという間だった。黒い毛玉は即捨てたけど。
そして地元の仲間は急なことにもかかわらず送別会を開いてくれて、泣きながら送り出してくれる奴もいた。そんな一生の別れじゃないんだから、と思う反面正直すごく嬉しかったなぁ。
まあ、そんなこんなで文頭にいたるわけだ。
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