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都心から何時間もかけ、船や飛行機を使わなければ到底辿り着けない離れ小島に、ある一つの隠れ里が在った。
そこは、古より十鬼族と呼ばれる一族を崇めているとされる謎多き里で、その名も―『鬼十首里』。
「― 鬼十老様、二人を連れてまいりました」
里で寺社の次に大きいと云われる一軒の屋敷の主であり、里一の長老で長となる鬼十老の元に、人を連れて戻った配下の者が現れた。
湯呑の茶を啜っていた彼は、その声を聞くなり湯呑を置き客人を出迎えた。
「入れ」
「「失礼致します」」
短い返答の次に、二つの声が重なって、赤い花が描かれた大きな両襖が開いた。
一人は黒髪を肩よりも短めに伸ばした十代程の少女で、もう一人は同じく黒髪で切れ長の目が印象的な二十代半ほどの若い男だった。
二人を見るなり、鬼十老は納得の意を示すように一人頷いた。
「哉夜、奏」
「「はい」」
二人は鬼十老に応じた。
鬼十老はまた一人頷く。
「私は病が身を蝕みそう永くない。出来ることなら私の代で決着をつけたいと思う。お前たち二人に委ねたい。‥頼まれてくれるな?」
「「はい」」
二人の声はハッキリと鬼十老の耳に届いた。
「頼んだぞ」
その日のうち、里から二人の気配はなくなった。
二本の刀と共に―
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