事務員さん #06 「事務員さんは感謝する」

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結局、電話機のリース契約は破棄されることは無く、 あの契約書が高田さんの手に戻ってからは、素早くきっちりと新しい電話機へと交換するための工事が事務所で行われ そして契約して工事が終わるまでの二か月間は、高田さんは気づけばしょっちゅう事務所にいた。 それは社長が頻繁に高田さんに電話をし 「分からない事があるから来なさい」 「工事の説明に来た人が気にくわない」 など、ほぼ ”いちゃもん” な事を言いつけ、「とりあえず来い」という強引で言い掛かり的なお願いをしたにも関わらず 高田さんが嫌な顔ひとつせず「はい、はい」と言われるがまま、電話が掛かる度に事務所に訪れたからだ。 今まで社長に営業的なことをして貢いでもらっていたイケメン達は、社長のいわゆる「お願い」をある程度の時間が経つとすっぱりと無視していた。 しかし高田さんは、そんな社長の相手を気づけば一年間続けている。しかも呼んでもいないのに月一回は事務所に必ず顔を出して 「何か困ったこと無いですか?」 そう笑顔で尋ね、何も無ければ社長と世間話をして帰っていく。 世間話をしてくれる高田さんのお陰で、最近の社長は「猪突猛進」的な貢物は少なくなっているし、私がよく分からない私的な事を社長に聞かれた時は 「高田さんに聞いたらどうですか?」 彼の名前を出せば、すぐそっちに興味がいくのでとっても楽である。 出会いは最悪で、しかも今でも「100万な電話」を朝来て見るたびムカついていはいるが、いまでは、 「高田さん、ありがとう」 多少の感謝すら覚える存在と化している営業・高田。 ただ、うちの営業の小宮さんは「あいつみたいなタイプ嫌いなんだよな」と、なんでかメラメラと敵意を燃やしています。 高田さんの、何がそんなに小宮さんの琴線に触れたのかと気にはなったが、 私は基本的に、地味で大人しい事務員さんですから 自分に被害が来ない限り関わることはしませんので。
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