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「ただいま」
大きな声がして事務所のドアが開き、男性が入ってきた。
「おかえりなさい」
そう言って彼を迎えた事務員に、男性が顔を向けて何かを話そうとした時、事務員の背後にいる僕に気が付いた。
「あ、すいません。お客様が来てたんですね」
男性が爽やかな笑顔で挨拶しながら会釈をしてきたので、僕も笑顔で会釈を返す。
静かに自分の席へと歩いていく男性を観察してみる。
たぶん彼は、28~30歳位だろうか。
180cmはありそうな高身長で、自分に自信がありそうな感じだ。
それに礼儀正しい雰囲気もあり、顔も悪くない。
社長はきっと見た目が好きで、採用したんだなと確信する。
事務員と隣り合わせの席に座った男性は小声で
「誰?」と聞いているようだ。
それに対して事務員は短く答えを返している。
―――いやまて。そんなことはどうでもいい。
そうだ僕は今から
「社長に容姿を利用し押してみる」
という芸をしなくてはならない。
事務員と社長だけなら良かったのに、と急に恥ずかしくはなったが
そんな恥より、この高額な契約の方がかなり大事だ。
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