営業の僕 #05 「僕と会いたいですよね」

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「ただいま」 大きな声がして事務所のドアが開き、男性が入ってきた。 「おかえりなさい」 そう言って彼を迎えた事務員に、男性が顔を向けて何かを話そうとした時、事務員の背後にいる僕に気が付いた。 「あ、すいません。お客様が来てたんですね」 男性が爽やかな笑顔で挨拶しながら会釈をしてきたので、僕も笑顔で会釈を返す。 静かに自分の席へと歩いていく男性を観察してみる。 たぶん彼は、28~30歳位だろうか。 180cmはありそうな高身長で、自分に自信がありそうな感じだ。 それに礼儀正しい雰囲気もあり、顔も悪くない。 社長はきっと見た目が好きで、採用したんだなと確信する。 事務員と隣り合わせの席に座った男性は小声で 「誰?」と聞いているようだ。 それに対して事務員は短く答えを返している。 ―――いやまて。そんなことはどうでもいい。 そうだ僕は今から 「社長に容姿を利用し押してみる」 という芸をしなくてはならない。 事務員と社長だけなら良かったのに、と急に恥ずかしくはなったが そんな恥より、この高額な契約の方がかなり大事だ。
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