事務員さん #01 「出会いの印象? 営業だなって思いました」

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ドアをノックする音が聞こえたので「はい、どうぞ」と反射的に返事をすると、ガチャっとドアを開けて入ってきたのは、どこをどう見ても営業マンだった。 (チッ、いま忙しいのに) 心の中で毒づいてから笑顔を作り、担当か社長をという彼に定番の言葉を返す。 「今はどちらも不在なので…申し訳ありません」 するとふと私の背後を見た彼は、こう尋ねてきた。 「あの、後ろの方は社長様ではないのでしょうか」  ・  ・  ・ 「はいそうですよ。シャチョーさんですよ」 そう言いたいのは山々だが、うちの社長様は飛び込み営業が大嫌いなんです。 うっかり取り次いだりしたら一日中嫌味を言われてしまいます。 なのでこれまた定番の「いえ、違いますよ」というお断りをしようとしたら、後ろの社長席から声がした。 「いいの角野さん。奥に入ってもらって!」 ……なぜだ。社長の知り合いだったのか? それなら訪問者リストに書いといてくれ。 少しだけ、なんでだと固まっていたが、営業くんが私の顔を見ていることに気づいた。しかもよく見れば彼も驚いた顔をしている。 なんなんだ一体。 でもまぁ社長が良いと言ってるんだし、と思い直した私は 社長には「分かりました社長」 営業くんには「ではこちらにどうぞ」 それぞれに声を掛け、事務所の奥にある応接室へと彼を案内したのだった。
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