事務員さん #03 「社長、あと7年は生きて下さい」

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「小宮さん、早く帰ってきて」 そんな私の願いもむなしく小一時間ほどすると、社長が自分の机へと向かい、そして何かを取り出そうとしている。 出来るだけ無害に見える笑顔を貼り付けて、ソーっと社長のそばへと近づいていく。そして「どうされたんですか?」と尋ねてみた。 社長から返された答えをまとめてみると、  あの営業くんが持ってきた書類にハンコを押すが  それは、認印ではなく会社印だと言う。 思わず「会社印ですか?!」と聞き返すと、「そうあはは。もう、大丈夫よ!」と軽い返事が。 おいおい。 普段ならこの時点で 「何考えてるんですか。この貢ぎ女め」 「会社印だぞ、まずは良く考えろバーカ」 的な事をオブラートに包みつつ、しつこく責めることぐらい朝飯前なのですが、今は社長が気に入ってる男性の前である。 イケメンを前にしている時に下手なことをいうと「恥をかかされた」と、白目をむいてキレだすだろう。 それに何を言ってもこのウットリ状態だと、耳を素通りして残骸も残らないことは経験済みである。 こういう時、イケメンにはイケメン。 小宮さんが最適なのだが、彼は今いない。 とりあえず小宮さんにメールを送ってみたが、返事はまだ無い……
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