プロローグ【死線】

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その銃弾は彼女の胸を貫いた。 機動スーツを強引に裂く低くににごった擦過音が、静かに戦場へと染みてゆく。 幾万もの銃弾が飛び交っているのにもかかわらず、その銃弾の音は、重く、深く、乾いていた。 黒焦げた大地に英雄が倒れ行く中も、銃弾の雨はやむことを知らず。続く。 遊撃兵は遠く以外の視界を失ったように、何食わぬ顔で〈十八ミリ電磁機銃〉のトリガーを絞り続ける。 高速で発射される銃弾は彼女の頭上を通り過ぎ、素早く不規則に動きまわる標的めがけ飛んでゆく。 が、外れる。 そして次の弾が、追うようにして後へと続く。
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