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「よお、探したぜ」
背後からの声に少女は振り向いた。
「ま、俺の予想通りだったってわけか」
少女は手の中の箱を見て沈黙する。
「最初にも言ったが、俺はお前の闇だ。だからもうすぐ消えてしまうだろう」
「え?」
「お前は知ってしまった。この世界は美しいって」
「そんな……」
「じゃあ未だその手の中にあるものはどう説明するんだ?」
少女は目を伏せる。長い睫毛が冬の寒さに震えている。
「本来なら後押しするべきだったんだろうが……もうその必要もないみたいだな。さあ、その爆弾を返してくれないか」
少女の瞳が揺れた。
「大丈夫。お前はこれから幸せに生きていくんだ。爆弾でなく、愛をもってな」
「……ねえ、影の人」
少女は真っ直ぐに影を捉える。
「また私が壊れてしまいそうになったら会いに来てくれる?」
「勿論。俺はいつでもお前の傍に居る。なんたって影だからな」
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