第23話

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都の審判所は、地方のそれと比べると荘厳である。 門扉のない牌楼(はいろう)の門柱は、各辺三尺(凡そ九十センチ)の角柱を黒塗りしており、屋根に掲げられた札の『審判所』という文字は金泥引き。さらに審判長が座す壇上は、よく磨かれた方形の石が隙間なく敷き詰められている。 監察府から渡される嫌疑者が重臣であった場合、長官である紹彩志や、大長官職を兼任する領議、稀ではあるが皇帝自ら詮議する故、それに相応しい審判所が普請されたのである。 領議は屋根もなく、石畳も敷かれていない嫌疑者の席で、壇上を睨んでいた。 重臣であることを考慮され、簡素な椅子ではなく、肘のついた椅子が用意されたが、台座に綿が敷かれていない木製の椅子は心地が悪く、尻が痛むばかりであろう。 紹彩志は、審判官の席でもなく嫌疑者の席でもない脇で立っていた。 此度の嫌疑者は重臣の中の重臣、領議であるため、左議が刑部大長官職を代理するという形になったのだが、おそらく領議派である紹彩志が便宜をはかることを阻止するために、左議は紹彩志から審判権を奪ったのだと思われる。
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