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領議がいたからこそ、己も父もこれまで成功してきたのだと思うと、紹彩志は自らの無力さが歯痒かった。
「ここに収賄の証がある」
左議が威圧的な声を発した。背板に深くもたれ、尊大に構えている。
審判官の席から監察府の官吏が見せたのは、商団名と金額が連ねられた裏帳簿であった。
領議は顔色を変えず、煩わしそうに弁論した。
「ふん。それは政治資金の寄付金として受け取ったのだ。収支報告書としてそれを提出するよう指示を出したが、書記が失踪した。これを不法取引とは左議殿はよほど私を失脚させたいらしい」
紹彩志は眉をひそめた。
まことに領議は潔白であろうか……。
しかし、父が信頼を寄せている領議に背く心などあってはならぬのだ。
折しも、門から大声が聞こえた。
「領議様は指示などしておりません!」
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