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「書記は私の手の者で、領議様を探らせておりました。書記の話では、領議様は賄賂と知りつつ受け取っていたと」
「出鱈目を申すな! 書記が居らぬのをよいことに偽りを述べるとは――」
「何故、書記が居らぬと? 領議様の甥が書記を始末したとお思いで?」
「何!?」
偉進は門の外から誰かを呼び寄せた。
現れたのは書記である。
書記は領議に一礼した。
かような場では、敵に寝返る者は多い。
おそらく書記もその口だと紹彩志は思ったが、しかし書記には己さえ助かればどうでもよいという、自己中心的な気配はなかった。
悩みあぐねた果てに決意した目であった。
「領議様は確かに賄賂と存じ上げておりました。故に、領議様の甥が帳簿の始末を命じたのです。帳簿を管理していた私は、甥が雇った男に腹を刺されました」
「貴様……」
領議は立ち上がり、力強い指で左議を差した。
「左議め! 貴様が謀ったのであろう!」
「謀ったも何も……。彼の証言に偽りがないことは貴殿がよくご存知であろう」
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