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私は新郎側の列席者。
新郎は同期の高橋。
緊張の面持ちの新婦は専務の娘だ。
彼女が今腕を組み、歩調を合わせている男こそが父親であり、その肩書きは我が社の専務だ。
聖壇に背を向けた新郎に、新婦が託された。
新郎は新婦の手を取って、自分の腕に絡ませた。
高橋は同期の同僚であり、ライバルだった。
といってもライバルだと勝手に思っているのは私だけ。
彼の営業成績は絶えずトップ、人間関係の構築も卒なくこなして、出世街道まっしぐらの男だった。
私といえば、高橋の成績を一度でも追い抜いてみたいと男勝りに飛び回ってた。
気がつけば周りの誰もが私を女扱いしなくなった。
いつしか合コンの誘いもなくなって、近頃では決まった上司とたまに居酒屋でくだを巻くことに、安らぎを見出してた。
ある日高橋には
「お前、可愛くないね。」
面と向かってそう言われた。
四捨五入すれば三十になる女だ、“可愛い”と言われなくて結構。
心の中でそんな悪態をつくこともあった。
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