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先生ははしゃいでいる生徒をなだめながら僕の名前を黒板に書いていく。
「じゃあ自己紹介をお願いします」
黒板に名前を書き終え、先生が言う。
教室内の29組の目が僕を見据えている。
後で聞いた話だけど、この学校には転校して行く人はいても、転校して来る人はゼロに近いそうだ。それも東京からとなると上野動物園のパンダ並みの人気なんだそうだ。
「ほ、本田充(ほんだ みつる)です。……よろしく、お願いします」
極度の緊張の中で僕は頑張った。
「東京ってどんなところ?」
「有名人にあったことある?」
「彼女はいる?」
まるでクイズ大会のように次々と質問され、僕は面食らった。
「そういうのは休み時間にしなさい」
先生に言われ、生徒の大半が『えぇ~』と不満を漏らしていたけど、やがて静かになる。
と言ってもまだ多少のザワツキはある。
「じゃあ、充の席はあそこだ。雪石の隣だ」
先生が指さした場所は窓側から二列目の一番後ろの席。
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