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部屋に戻るとポロポロと涙が勝手に零れ落ちてきた。
確かに前の僕なら今日の父さんの話を聞いたら飛び上がらんばかりに喜んだと思う。
でも……今は違う……。
もうすぐ昴と離ればなれになってしまうなんて……。
考えれば考えるほど僕の気持ちは沈んでいき、決して浮き上がることはなかった。
結局、一睡もできないまま夜が明けてしまった。
時計を見ればまだ5時、外は真っ暗だ。
僕は一晩中泣き続けた顔を洗うために洗面台の前に立つ。鏡に写る僕の目は真っ赤だった。
「どうすれば……」
顔を洗い、部屋に戻った僕は朝食が出来上がるまでずっと考えていた。
僕はこの引越しには反対だった。都会の便利な生活になれた僕に不自由だらけの田舎の生活なんて、だから引越し当日もずっとダダをこねていた。
その姿を見て何より傷ついたのが父さんだったのだろう……。
自分の転勤、しかも左遷のせいで息子に嫌な思いをさせてしまった。だから父さんは引越して来てからはとても頑張っていた。僕が起きるより早く会社に向かい、僕が眠った後に帰ってくる。僕のために父さんは頑張ってくれたんだ……。
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