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その結果、父さんは昇格し、また東京に戻ることになった……。
僕は冬休みの間にまたあのゴミゴミした東京に引っ越さなきゃいけなくなったのだ。
昴のいない東京に――。
「充、ごはんよ~」
母さんの呼ぶ声が聞こえる。僕は泣いていたことがばれないように台所に向かう。
今日は珍しく父さんも一緒にご飯を食べていた。なんでも父さんが任された仕事が軌道に乗ったので、朝早く行かなくても大丈夫になったそうだ。
昴との別れ、父さんの頑張り。その事が僕に重圧を与えていた。
朝ごはんが全く味のしない砂のようだったのはきっとそのせいだろう……。それでも僕は心配させないように残さず口に詰め込んだ。
結局、なんの解決策も見つからないまま僕は学校についてしまった。
とりあえず、今はこの事は昴には黙っておこう。そう心に誓って僕は教室のドアをくぐる。
いつもの教室、いつもの場所に昴は座っていた。
その姿が見えた時、僕は不意に泣き出しそうになってしまった。
ここで泣いちゃいけない、そう思い、流れだしそうになる熱いものをぐっと堪える。
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