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「ふーん」
「差別みたいになってしまって、申し訳無いけどね……だから代わりに、アルディア周辺の町ではエルフたちが優遇されてるの」
思い返してみれば、前に立ち寄った町では特にエルフやドワーフたちが楽しげに騒いでいた気がする。
飲めないくせに入った酒場では、見渡す限り全員が彼らだった程だ。
「だから、あの町は臭かったんだ」
「こら。そんなこと言わないの」
町全体に染み付いた、エルフの薬臭さやドワーフの汗と土の匂いを思い出して顔をしかめれば、すぐさまフィルにたしなめられる。
「 だって、地球じゃあんな匂いありえないし」
「しょうがないでしょ? ここは地球じゃないんだから」
「なに、ケイはまだ駄々こねてんの?」
「うひっ!?」
首筋をさらさらしたものが擽り、ぞわりと肌が粟立つ。
思わずすっとんきょうな声が出た。
後ろを歩いていたホノカがひょいと横に並んだ際に、一括に結い上げている髪が当たったのだろう。
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