第一章

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1  家の前で、人が倒れていた。 「………………」  なんだろう、これ。  いや、人なのはわかってる。そうじゃなくて、これは状況に対しての純粋な疑問だ。  だってそうだろう? 学校から帰ったら玄関の前に人が転がっていた、なんて脈絡がないにも程がある。  だけど残念ながらこれはリアルだ。現実と書いてリアルだ。  これは119番に電話をかけるべきだろうか?  とりあえず、倒れてる……少女? に声をかけてみる。 「あ、あのー……」  ピクリ、と指先が動いた。どうやら意識はあるらしい。 「救急車、呼んだ方がいい?」 「……いや、結構だ」  今度は声が返ってきた。  蚊の鳴くような声で聴きとりづらいけど。 「はぁ……。じゃあ、どうしよう?」 「こ……」 「こ?」 「米を……ご飯を……く」  そう言った瞬間に少女の身体から力が抜けた。  そして、空腹を示すおなかの音が響き渡った。
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