言えないから、さよなら

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 やはり答えない美鈴。その沈黙を肯定だと思った雅哉は、声が震えそうになるのを必死で抑えながら問う。 「そんな大切なこと、なんで黙ってたんだ。美鈴一人の問題じゃないだろ」 「…………だって、言ってももうどうにもならないから」  美鈴の声は、震えていた。 「あの日、初めて病院に行ったの。それで、わかって…………びっくりしたけど、嬉しかった。家族ができるって思って、本当に嬉しくて。でも、帰りに、あんなことになって…………お腹の赤ちゃんもね、見えなくなっちゃうんだって…………」  ずっとずっと心に押し込めていた秘密。それを話し終えた時、想いとともに美鈴の涙があふれ出す。彼女は口に手をあて、声を押し殺して泣いた。  そんな彼女を前に、雅哉が選ぶ道はたった一つしかなかった。 「やっぱり、俺も一緒に行く。被験者になるから」  雅哉の言葉に、美鈴ははっと顔をあげた。 「それは駄目だって言ったじゃない!」 「だったらどうするんだよ!」 「私は…………大丈夫だから」 「なにが…………なにが大丈夫なんだよ!」 「もう、一人じゃないから。大切な家族ができたから。だから、大丈夫」  そう言って、彼女は柔らかな笑みを浮かべた。そんな彼女を、光の粒が彩る。 「…………ごめん。ごめんね、雅哉」 「だから、ごめんってなんだよ。なにがごめんなんだよ」 「…………黙っててごめん。勝手に決めてごめん…………会わせてあげられなくて、ごめん」  震える声で美鈴が言い終わると、まるでその時を待っていたかのように彼女のまわりには光の粒があふれ出していた。瞳から零れ落ちた涙も、光となり、闇夜へと溶けてゆく。 「待てって。まだ行くな!美鈴!!」  消えてしまう前に、彼女の腕をつかもうと雅哉は手を伸ばす。だが、その前に美鈴の体はすべて消えてしまった…………彼女の微笑みとともに。 「美鈴!美鈴!!」  まだ近くにいる。必死に美鈴の名前を叫ぶ雅哉。けれど、彼女がそれに答えることはなかった。
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