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「…………雅哉…………どうして…………」
そこにいたのは、雅哉だった。雅哉はまっすぐ、姿が消えてもう見えないはずの美鈴の姿を見つめていた。
「私が、見えてるの?」
呆然と言う美鈴に対し、雅哉はふっと笑みを浮かべていった。
「見えてる。お腹、大きくなったな」
透明となった者の姿が見える。それが意味することはただ一つしかない。美鈴は血の気がひいていくような気がした。
「まさか…………」
「あぁ。被験者になった」
「駄目だって言ったじゃない!そんなことしたら…………」
自分のせいで彼まで巻き込んでしまったことに困惑する美鈴。そんな彼女とは対照的に、雅哉は迷いのない落ち着いた声で言った。
「わかってる。でも、美鈴とお腹の子供をほうっておくなんて、やっぱり俺にはできない」
美鈴はもうこらえきれなかった。今までずっとため込んでいた想いが、涙と一緒にあふれ出す。
「待たせてごめん。被験者の手続きが予想以上に時間がかかって」
謝る雅哉に、美鈴は顔を横にふった。
「でも…………お母さんや雅さん、雅人くんは…………」
「全部話した。そうしたら…………」
その時のことを思い出し、雅哉は苦笑した。
「なにやってんだ、さっさと行けってみんなに怒鳴られて、家を追い出された」
なんだかその光景が目に浮かび、美鈴は泣きながら笑った。
「大丈夫だから。きっといつか元に戻れる。だから、一緒に新しい家族を作ろう」
泣き止まない美鈴を、雅哉はそっと優しく抱きしめた。
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