言えないから、さよなら

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「ほらほら、見て。もうちょっと透けてきてるんだよ」  そう言って美鈴は天井のライトに手をかざす。確かに、手のひらごしにLEDの灯りが透けて見えた。 「…………消えたら、どうなるんだよ」 「ん~、なんかね、透明人間になっちゃった人は山の中に作った特別区っていう新しい町で暮らすんだって。まぁね、透明人間がうろうろしてたらいろいろ問題ありそうだもんね。あ~、アイスにするかゼリーにするか悩むなぁ~」 「いま悩まなきゃならないことは別にあるだろ!どうするんだよ。いつか元に戻れるのか!?」 「まだわかんないっだって。とりあえず仕事は辞めるしかないよね。いま人手が足りないのに、店長に迷惑かけちゃうな」 「だから!!」 「あっ、そうだ」  そこで美鈴はようやく雅哉の顔を見た。 「次の週末、雅哉の家に遊びに行ってもいい?」 「…………それは別にいいけど」 「消えちゃう前にお母さんや雅人(まさと)くんに会いたいなぁって思って。雅(みやび)さんにも会えたら会いたいなぁ。直春(なおはる)くん大きくなったかなぁ」  衝撃の事実に動揺する自分とは対照的に、いつもとまるで変わらない彼女。そのあまりの差に、雅哉は自分の方が慌てすぎなのだろうかという錯覚におちいっていた。
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