言えないから、さよなら

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「…………なぁ、こんなことになったからじゃなくて、ずっと考えてたんだけどさ…………」  緊張で声が震えた。でも、はっきりと雅哉は言う。 「俺と結婚しないか」  思いもよらぬ雅哉の言葉に、美鈴は驚き顔をあげた。そんな美鈴を見て、雅哉は久しぶりに彼女の顔を見たような気がした。いつもは話す時はこちらが恥ずかしくなるほど真っ直ぐ相手の顔を見る美鈴なのに、今日はずっとうつむいてばかりだった。 「あれから星降る夜のことをいろいろ調べたんだけど、特別区に移住した後も身内なら会えるらしいから…………」 「駄目だよ」  今にも泣き出しそうな顔で雅哉の話を聞いていた美鈴だったが、優しい笑みを浮かべたあと、またうつむいた。 「いつ体が元に戻るかわからないのに、もしかしたら一生消えたままになるのかもしれないのに…………それなのに、待っててなんて言えないよ」  最後は消え入りそうな声だった。 「だったら俺が被験者になる。同じように透明になれば透明になった人間も見えるんだろ?今、この現象の研究のために被験者を募集してるんだ。被験者になれば特別区の管理の仕事も貰えて、特別区で暮らせるようになる。今回の被害者の家族が被験者になるケースもけっこうあるみたいだし…………」 「だから駄目だって言ってるでしょ!」  美鈴の怒鳴り声に、必死に説明していた雅哉ははっとなった。美鈴がこんな風に怒ったことを今まで見たことがなかった。
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