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「雅哉が消えちゃったら、お母さんや雅人君、雅さんや直春君からも見えなくなっちゃうんだよ?そんなの、駄目だよ」
「でも、だからって…………」
「ずっと憧れてたんだよ。雅哉みたいな家族に」
そのことは雅哉も知っていた。幼い頃から家族に恵まれなかった美鈴は、雅哉の家のような家族を持つことが夢だと言っていたのだ。
「雅哉は当然のようにずっと家族がいたから、その大切さに気が付いてないんだよ。大事にしなきゃ、駄目だよ」
「でも、だったらどうするって言うんだよ!」
このまま彼女が消えてしまうのを黙って見ているしかないのか。握りしめた雅哉の拳は震えていた。その拳を見た美鈴は、目を閉じ、静かに息を吸い込む。
そして、静かに告げた。
「だから…………別れよう」
「なっ…………」
雅哉は、一瞬美鈴がなにを言っているのか理解できなかった。
「お前、なに言って…………」
「そうすればもうなにも問題ないでしょ。私なら、大丈夫だから」
「なにが大丈夫なんだよ!冗談だろ!?」
「冗談なんかじゃないよ。だから…………ごめん。さよなら」
一方的に言うと、美鈴は駅前の横断歩道を渡ってしまった
「ま、待て!美鈴!!」
一瞬呆然としてしまった雅哉は、すぐに追おうとしたが、信号が赤に変わってしまった。ちょうど電車が着いたのか、駅からあふれでた人混みの中に美鈴の姿はすぐに紛れてしまった。
そして、その日を境に、美鈴は雅哉との連絡を絶った。
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