番外編 「天国と地獄」

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焦ってとっさに顔を下げてしまったが、この間のお家デートでキス避けし嫌な空気が流れた映像が突然頭にサーッと思い浮かぶ。 (あ、キス自体が嫌で避けた訳じゃないとお知らせしないと、あの黒小宮が……) またまた焦り、ここはとりあえずハグでごまかそうと、かがみ加減に立っていた小宮さんの胸に顔をぶつけながらも、両手でトスンと腰に抱きついた。 「………」 おや、小宮さんからの動きがない。 ただこの状況を社長に見られるのも地獄。 なので、「ごめんなさい」と謝りつつ腰に回した手を外し、小宮さんからゆっくり離れようとしたその時、 背中に手が回り軽く引き寄せられ、頭のてっぺんに額を置かれた。 「……えっと」 頭にドンと重さを掛けられ顔を上げられないんで、何となく目だけを頭上に向け「小宮さん、あの──」と両手を胸に当て、そろそろ離して欲しいと訴えかける。 「あーごめん」 謝ってきたんで素直に解放してくれるのかと思いきや、 乗せてた額を私の頭から離した小宮さんは、背中に回していた腕はそのままに自分の体を後ろに下げ、切なげに顔を落としてきた。 (あ、結局ちゅーされる) はい。もう私に ”避ける” という選択肢は消えた。 (無駄な抵抗だった……) まだ残っているおでこの寝跡を眺めながら眉を寄せると、それを見た小宮さんが目を細めて軽く笑い、それからすばやい動きで唇を重ねられる。 「おっほほほほっ~~そうなのよ~~」 ドアの向こう側、雑居ビルの細長い廊下に社長の高笑いが響き渡った。 「………」 「………」
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