1815人が本棚に入れています
本棚に追加
/359ページ
焦ってとっさに顔を下げてしまったが、この間のお家デートでキス避けし嫌な空気が流れた映像が突然頭にサーッと思い浮かぶ。
(あ、キス自体が嫌で避けた訳じゃないとお知らせしないと、あの黒小宮が……)
またまた焦り、ここはとりあえずハグでごまかそうと、かがみ加減に立っていた小宮さんの胸に顔をぶつけながらも、両手でトスンと腰に抱きついた。
「………」
おや、小宮さんからの動きがない。
ただこの状況を社長に見られるのも地獄。
なので、「ごめんなさい」と謝りつつ腰に回した手を外し、小宮さんからゆっくり離れようとしたその時、
背中に手が回り軽く引き寄せられ、頭のてっぺんに額を置かれた。
「……えっと」
頭にドンと重さを掛けられ顔を上げられないんで、何となく目だけを頭上に向け「小宮さん、あの──」と両手を胸に当て、そろそろ離して欲しいと訴えかける。
「あーごめん」
謝ってきたんで素直に解放してくれるのかと思いきや、
乗せてた額を私の頭から離した小宮さんは、背中に回していた腕はそのままに自分の体を後ろに下げ、切なげに顔を落としてきた。
(あ、結局ちゅーされる)
はい。もう私に ”避ける” という選択肢は消えた。
(無駄な抵抗だった……)
まだ残っているおでこの寝跡を眺めながら眉を寄せると、それを見た小宮さんが目を細めて軽く笑い、それからすばやい動きで唇を重ねられる。
「おっほほほほっ~~そうなのよ~~」
ドアの向こう側、雑居ビルの細長い廊下に社長の高笑いが響き渡った。
「………」
「………」
最初のコメントを投稿しよう!