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「や、気にするな。俺は角野さんと楽しく話してたんで、そこは別に謝らなくてもいいから」
「そうか? あー確かに、角野と妙に息が合ってた気が」
「うん、ちょっとな。なんか、お互いに分かり合える部分がありまして。ただ彼女の方はこれからも大変だろうな」
坂上はウンウンと真面目にうなずいたあと、またおかしそうな顔になる。
(いや、何をそんなに分かり合えたのか。角野とお前に共通項など無さそうなんだが)
どこだ? と考えていると、隣で坂上が楽しそうにハハッと笑った。
「でも小宮。角野さんはお前から聞いてたイメージより話しやすかったぞ。それに見た目と違って意外やアッサリした性格みたいで」
「そうだな。仕事がしやすい子だとは思う」
「まぁ自分からは、あまり話さなかったけどな。―――ただ聞くのが上手なのか、話は弾んだんで結構気に入ったかも」
角野のことを話しながらニコニコとビールを飲みはじめた、そんな坂上を見ていたら、なんとなくあの営業・高田のことが頭に思い浮かんだ。
「へー。……というか、角野は最近よく懐くし、懐かれるな」
「懐く?」
「あ、いいんだ。気にしなくていい」
そのまま、またボンヤリ色々考えはじめていると、坂上がふと何かを思い出した様子でこちらを振り返った。
「でも俺なんかより、小宮の方が角野さんとよっぽど仲良さそうだったけどな」
「ん? 付き合いが長けりゃ、嫌でも親しくなるだろ」
意識を坂上に戻しなげやりな感じで答えてから「もう五年も同僚やってるし」と首をすくめてみせると、
意外に反応が薄かった事がつまらなかったのか、坂上は「ふーん」と疑いの視線でしばらく見てきたあと更にたたみかけてきた。
「……で、角野さんにすでに手を出してしまっている、てなことは無いよな」
「はい?」
―――こらこら。
なぜ突然、そんな話になるのか。
そんな空気感は角野と俺の間には全く無いはずだ。
「それは絶対に無い。それにもしその気があったとしても三人しかいない会社で手を出すのはいくらなんでも普通は控えるだろ」
眉をひそめて強めの否定すると、坂上は安心したかのように「うんうん、そうか」とうなずき、やっぱりなと納得した感じで笑い返してきた。
「まーな。手を出したようには見えなかったし、見た目もお前のタイプと違うし。一応の確認をしただけだ」
(―――見た目?)
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