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「あーそれ、角野が地味ってことか?」
「ま、そうだな地味は地味だな。でもお前が言うほど酷くないと思ったが」
「……いやいや、そんなに酷く言った記憶は無いぞ」
手を横に振りつつ本気でこれまた否定をすると、坂上は「そうだろうな」と小さくつぶやき
「実際に会ってみて二人の雰囲気を見てみると、どうも角野さんの事を小宮は可愛がってるみたいだったから―――」
それから俺の顔をジッと見て、また静かにつぶやく。
「あれだな。ツンデレ的な発言だったんだな、と」
(待て坂上。今の発言内容にかなり不服がある)
「坂上。35歳を捕まえてツンデレとか、ないわー」
速攻で、嫌そうに顔をしかめながら反論すれば
「まーでも彼氏がいるみたいだから、お前の出番は無いな」
なぜかツンデレと全く関係のない答えが返ってきた。
「はい? それ俺、聞いてないんだけど」
「は? わざわざ小宮に報告する義務はないだろ。それに、たまたま尋ねたから教えたくれただけで」
坂上は俺を横目で見ながら、その時の内容を思い出すかのようにゆっくりとした口調で話を続けた。
「相手はなんか幼馴染的な奴なんで、本人たちより親の方が盛り上がってるらしい。『知らぬ間に籍いれられそうな雰囲気で怖いですー』って角野さんは笑ってた」
「それは、かなり外堀を埋められている状態では」
「ま、そんな感じだな。案外ちゃちゃっと嫁に行って寿退社したりして」
「ちゃちゃっと、か。いや、なぜか角野はずっと会社にいるイメージがあった」
正面に向き直り、意外だ…というのを隠しもせずに喋っていると思いっきり眉をよせた坂上に怒られてしまう。
「なんだそれ。嫁にいけないとか思ってたのか? 角野さんへの評価低すぎだろ」
「いや違う、そういう意味で言った訳じゃ……」
怒られて急に大人しくなった俺に気づいた坂上はニヤっと嬉しそうに笑い、俺の腕をキャピッとゆるくパチパチ叩きながら聞きたくもない裏声を出した。
「やだ。小宮さんって、ひどーい」
「……坂上、うるさい。水野の真似をするんじゃない」
「えーというかぁ、ヤ・キ・モ・チですかー?」
「やめろ。もう一生黙っとけ」
「はははっ」
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