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そこからしばらく二人して沈黙したあと、坂上がポツッと喋り始める。
「そういや小宮。もう一人いただろ、ほら」
一瞬、もう一人? となったのだが、帰りにそういや会ったなと思いだす。
「あー氷室さんのこと?」
「そうそう。あのお前に媚びまくってた、若そうな可愛い子は知り合いか?」
「あーあれはな、ウチの会社から近い取引先の店舗の子で、用事がある時たまに顔だしてる程度なので、―――まぁ顔見知りだな」
どうでもいい感じで流すと、坂上は失笑が入った苦笑いを浮かべ俺の肩に手を置いた。
「しかし小宮はほんとに、35になってもモテるな」
「あははー。お顔がいいもんで」
*****
「金曜日はごちそうさまでした」
週明け、会社に行ったらポットを手にした角野が笑顔でお礼を言ってきた。
(飲み会が終わったら、晴れ晴れした顔で帰ったくせにな……)
そんなことを思いながらも、顔を見てニヤッと笑いかける。
「いえいえ。―――そういえば角野、彼氏できたらしいな」
「はい? あ、坂上さんから聞いたんですか」
角野はそのあとハハッと曖昧な笑い方をしてから、社長のお茶を入れる為のお湯を取りにそそくさとビルの給湯室へと向かって行った。
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