地味という事実は、覆すことができない

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そんなことを話しているうちに目的地に到着したので店員に名前を伝え、個室へと案内された後メンテナンス会社の社長に挨拶をした。 それから、どこへ座ろうか…と部屋をぐるっと見渡す。 「小宮さん! こっち空いてますよー」 ―――おっと。この声は、水野だ。 彼女に手招きで呼ばれたあとなんとなく角野の方を振り返ると、すでに水野が座っている場所から離れた席へと向かっており、 俺には ”今からは私に声を掛けるな” という態度で ……というか背中でそう語っている。 なぜだか急に角野の頭にポンと手をのせて振り向かせたい、という気持ちが湧いてきたが、どうせ振り返らせても嫌そうな顔をして 「なんですか?」と言われるだけだろう。 だからそのまま何もせず、声を掛けてきた水野の方へとクルッと向きを変え、お久しぶりですと営業笑顔を貼り付けゆっくりと歩いていった。 忘年会が始まって一時間半ほど経ち、飲んでいたお酒がいい感じで回ってきた頃 「子供って可愛いですよねー。そろそろ欲しいー、って思いません?」 とか言って、隣に座っている水野が小首をかしげてきた。 (―――子供? 今は別にどうでもいいですが) とりあえずは何かを言おうと水野の方を見たとき、 「外見は好みなんだけどな」 そう坂上に話したことが頭に浮かんできた。 そこでさっきの「子供欲しいですかー?」とかいうどーでもいい質問に適当に返事をしながら、 水野の切れ長の目や整った鼻筋が配置されている綺麗な顔を眺めてみる。 ……確かに、顔は好みな方ではある。 たぶん違った出会い方をしていれば、口説いていたかもしれない。 なら、なんでうっとおしいと感じるのか。 「えー小宮さん酷すぎですぅー。でもーやっぱりー、子供が欲しいなら若い子の方がいいですよねー」 (あーなるほど……) この喋り方と喋ってくる内容。どう考えてもそれが好きになれない。
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