地味という事実は、覆すことができない

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それに彼女が何か言う度に、うんうんと頷くまるで手下の様な彼女の同僚である女性事務員二人。 角野が避けている理由と同じくこの二人も、水野の機嫌を損ねないよういつも腫れ物に触るような扱いをしているんだろう。 この二人も角野が同僚だったらもっと楽だったろうに。 興味を持った人をジッと見つめる変なクセはあるが、それはその人が何を考えているかや距離感を把握するためで、 いざという時にタイミングよく動けるよう気遣ってくれているからだし 坂上が言っていたようにイジイジと悩みそうな見た目をしているのに、意外に嫌な事があっても根に持たずあっさりと水に流すタイプだしな。 だからあの乙女でややこしい性格の社長も案外気に入ってるらしく、今までの事務員ほとんどが社長と喧嘩して短期間で辞めていっていたらしいが、 角野は六年もおり、それにどんなに貢物の件で角野がブチ切れても社長は怒りもせず笑っている。 それにさ、あの時は―――。 あ、あれも―――。 ………… ………… ひとり回想にボーッとふけっていたが、フッと我に返る。 (いやいや……) 気づけば頭を下に落とし、心でつぶやいていた。 (なぜいま、幸せな気分で角野のことを考えた……) 顔を上げるまでは時間にしたら一瞬の出来事だったはず。 ただ会話の途中でボーッとした、と思ったら突然ドンッとうつむいた事に驚いた様子の水野が焦った声を出し、背中に手を当てさすってきた。 「こ、小宮さん? 小宮さーん。大丈夫ですか? 酔いましたー?」 「お水もらいましょうかー?」 「……あーはい、少し酔ったかも。ちょっと涼んできます」 水野の心配を右から左にスルスルと聞き流しながら、よっこいしょ…と片足に力を入れ立ち上がろうとしたとき、 ニッコリ微笑んだ水野に素早い動きで柔らかく腕をつかまれる。 「じゃあ心配なので付き添いますよー」 (いや。この動揺は、ある意味、お前がきっかけなんだけどな) その事実に物凄く苛立ったせいか、いつもの営業笑顔も忘れ 「いいです。一人で行くので」 そっけなく言い返し、つかまれた腕を引きはがしてから部屋を出た。
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