地味という事実は、覆すことができない

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部屋の外に出たあと、トイレへと行く途中の廊下の壁に背中をもたれかけさせ、 スマホを適当に触って用事をしている振りをしながら またボンヤリ考えはじめる。 そうだよな、基本仲は良いんだから考える事もたまにはあるか。 でもさっきのだと、角野が掘り出しもんぽく聞こえるよな。 思っていたより、周りから見ると意外に角野の評価は高いんだろうか。 しかしいつも困ってたり嫌そうな顔したり、怒ったりしてるのはなぜだ? 会社での角野の仕草や表情をウーンと軽く首を傾けながら思い出していると、またまた坂上と話していた時のセリフが頭に浮かんだ。 『仕事がしやすい子だ』 (お! なんだそうか。同僚として働きやすい子なんであんな風に考えたんだな) 何とはなしにそんな結論が出て、そうかそうか…と一人それに納得していたとき 「やっぱり心配で、来ちゃいましたっ」 テヘッという擬音が聞こえそうな顔をした水野が、目の前にピョンと飛び跳ねて現れた。 (……こいつスゲーな) 変な感心の仕方をしつつもさっきまでの動揺はもうすっかり消えていたので、水野の動きに思わず「ふっ」と小さく吹き出したあと軽い笑顔を作る。 「あーどうも。でも、そろそろ戻ろうかと思ってました」 部屋に戻り自分がいた席へと向かう途中で、そういえば角野は今どこにいるんだろうかと辺りを見渡してみた。 すると角野はメンテナンス会社の社長の隣で何かをウンウンと聞いており、同じテーブルにはうちの社長や50代位の女性が座っている。 その場所はたぶんこの部屋の中で一番年齢層が高く そしてたぶん、いや確実に一番雰囲気が地味な場所で。 そこに年齢自体は29だが、どう高く見積もっても見ため年齢が25歳以下という童顔の角野が、違和感なくもう見事にすんなりと馴染んでいるのをみて (いやいや角野、お前な、そこにそんなに馴染むなよ) 勢いよく思わずツッコんだら、ジワジワと心の底から笑いが込み上げてきた。
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