地味という事実は、覆すことができない

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「小宮さん、二次会いきますよね?」 「あ、いや。オッサンは疲れたのでもう帰ります」 水野に結構しつこく誘われた二次会への参加は断り、 帰りの挨拶をするため社長の元へと歩いていくと、同じタイミングで角野も来ていたので、一緒に帰りの挨拶をしてからいま思いついたかのように声を掛けた。 「角野。もう遅いし一緒に帰ろう」 「え? あーえっと、ありがとうございます。でも、今日は彼氏が迎えに来る予定になってまして。だから駅まで、でよかったら一緒に帰りましょう」 挨拶のあと社長から少し離れた場所で俺の横に立ちスマホを操作していた角野は、そう言ってから 「すいません。ちょっと」 どこかに電話を掛けはじめる。 (そうだ。角野には彼氏がいた―――) なぜか今まですっかりその存在を忘れていたが、思い出すと同時に角野の彼氏がどんな男なのかをもの凄く知りたくなった。 そこで電話の相手はたぶん彼氏だろうと予測し、通話を終えた角野に尋ねてみた。 「彼氏、すぐに来るのか?」 「いえ。近くにいるけど十分程かかるかもって言ってました」 それから駅までの道を楽しく一緒に歩いていたんだが、彼氏が指定してきたであろう場所に着いたようで トンっと立ち止まった角野に笑顔で会釈をされる。 「じゃあ、ここで。小宮さん、今日はお疲れ様でした」 (―――いや待て。どうしても、彼氏を見たい) 「角野。もう21時過ぎてて人通りも少ないから、彼氏が来るまで一緒に待っててやるよ。俺の酔いも冷ませるし」 「そんなのいいですよ、大丈夫ですから」 「遠慮すんなよ」 最後は勘違い男みたいなセリフを吐きつつ、彼氏が来るまで適当な会話を続けた。
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