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「ごめん、お待たせ」
しばらくすると彼氏が現れ、そして一緒に立っていた俺に気づき何かを尋ねる様子で角野の顔を見た。
彼氏のその顔を見ておかしそうに笑った角野は簡単にお互いの紹介をし始める。
そこから「あっドーモー」なんて笑顔で彼氏と挨拶をし合いながら、彼氏はこいつかーとその姿を上から下まで眺めた。
「私の彼氏は、そんなに珍しい生きもんじゃないですから」
角野はジロジロ眺めている俺を見て面白そうにしていたが、それを聞いたとたん
(そうか彼氏か……)
急にドンとした重さを胸に感じ、角野と笑い合っている彼氏の方を強い視線で見ながら冗談めかしてつい言ってしまっていた。
「俺も角野を狙ってたのになー」
「小宮さん。思ってもないことを言って、反応を面白がるクセは直した方がいいですよ」
いつものふざけた会話だと思った角野は俺の言葉を軽くかわし、「じゃ、帰りますね」と彼氏に合図をして去ろうとしたが、
彼氏の方は俺を驚いて見ており、そしてその言葉にちょっと本気を感じたのだろう。
角野のように素直に冗談だと受け止めず、かなり不快げに眉をひそめ
「それじゃあ、失礼します」
俺に向かって緊張感のある冷たい声を出したあと角野の背中に手を添えて押し、仲良く笑顔で歩き始めた。
******
あれから自宅に帰りつき、疲れた…とソファーにコロコロ寝転がりながらしばらくボンヤリと考えていた。
あぁそう。
あの最後の「狙ってた」って発言は週明けにでも角野に謝っとかないと。
しかし「好きかも」のかもって、どれくらいのもんなんだ?
そういえば。
俺の友達で、唯一角野に会ったことがあるヤツがいたよな。
その内、飲みにでも誘おうか……
そこら辺でボンヤリした状態からフンッと気合いを入れて起き上がり、とりあえずお風呂に入ってスッキリする事にした。
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