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「そういや前に会ったのは秋ごろだったよなー。あれから変わった事とかあったか?」
ふと前の飲み会を思い出しただけで別に深い意味はなかったんだが、なぜかしばし無言になった小宮が、そうだな…と遠くを見はじめた。
「その秋に一緒に飲んだな、角野って覚えてるか?」
(あーあの、小宮とやけに仲がいい事務員―――)
「覚えてる、覚えてる。それとなんか、小宮の事が大好きな美人さんもいたよな」
思い出し笑いをしていると、小宮も微妙な表情で「そうそう」と面白そうにニンマリ笑う。
「実はあれから再び、角野と水野が鉢合うというイベントがありまして。―――ま、忘年会なんだけどさ」
「お、それ知ってるかも。あれだろ。えーっと、何か合同でするってヤツだろ?」
「そう、よく知ってるな」
少し驚いた様子の小宮を見ながら、何とはなしに懐かしい気持ちになる。
「うん。角野さんから聞いたんだ、たぶん」
その時のことを微笑ましく思い出していると、小宮が俺をチラ見したあと興味なさげな感じでシラッと聞いてきた。
「そうか、他にも何か聞いたか?」
「いや特には。前の会社での小宮の面白ネタを話したのは覚えてるけどな。いやーあれは超ウケてたなー。はははー」
楽しく笑いながらも何かを感じてフッと前を見ると、お得意の氷点下な冷たい視線がなぜか俺に向けられている。
「坂上? それは、一体、何を、話したのか、是非とも、聞いておきたい」
「………」
ゆっくりとした低音ボイスと端正な顔ならではの目力がもの凄い迫力で、なぜそこまで――と怯え顔がひきつるも、
とりあえずは笑ってごまかすことにした。
「うはは~。日にちが経ってるから、細かいことは覚えてないな~。うはは~」
「………」
ごまかしてるのが丸わかりの俺に、しばらくは無言の圧力をかけていた小宮だったがフッと力を抜いたあと、
まぁいいか…とため息をつき真面目な顔になって言った。
「その合同忘年会でな。俺、角野が好きかも、となった」
へーそうなんですかぁ……………って、はいっ!?
「えーと、聞き直して申し訳ないが、あの角野さんのことかな」
「そう、あの、角野」
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