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小宮の戸惑っているような、困っているような、その様子を見て思わず盛大な苦笑いをしてしまう。
「というか。こういう恋愛系は、俺より小宮の方が慣れてるはずだろ」
散々女性と絡んできたくせに今更なにを……と呆れた声を出してみると、小宮もハハッと苦笑いをした。
「いや、なんというか。仲がいい友達で角野を知ってるの坂上だけだったからさ」
静かに視線を落とした小宮をまだ苦笑いで眺めていたが、また黙り込んだのを見て笑うのを止め思い直す。
(軽く言いつつ、意外に真面目に悩んでいるのかもな……)
そこで自分の数少ない経験を総動員し、以前に見た二人の様子も思い浮かべ、ゆっくりと落ち着いて考えてから声を出した。
「だけどなー小宮、俺が思うに。それは自覚なしで前々から実は気になっていたか、好きだと気づきそうになってはいたが、その度に違う…と気が付かないフリをしてただけで―――」
「それがたまたま今回、なんでかハッキリと気づかされたってパターンなだけだと思うぞ」
すると小宮は「たぶんそうだな」と悲しそうに笑って答えた。
そのまま黙ってお酒を飲んでつまみを食べる……そんな時間が数分続き、
話の流れから角野さんと会い小宮と彼女の話しをした、アノの秋にあった飲み会をまたつらつらと懐かしく思い出していると
(おや? そういえば)
角野さんの事を面白おかしくツッコんでいたその時の会話を思い出し、不審そうに眉をよせつつポツッと小宮に尋ねた。
「小宮は角野さんは三人しかいない職場の人なんで ”絶対手を出さない” と、あのときハッキリと言っていたと思うんだが―――」
顔を上げてこちらを見た小宮と顔を合わせた、しばらくの沈黙のあと
「そんなこと、言ったかな?」
小宮は驚いたかのように片眉を上げた。
(ちょーまて、こら。―――手を出す気満々じゃねーか!!)
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