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する気全然無いくせに…と呆れた俺を見た小宮は、急にこれまでにない真剣な様子にスッとなり
「だからな坂上」と俺にジッと目を合わせた。
「彼氏から奪うために金曜にでも飲みに誘って酔わして、それから『送るよ』なんて優しく言いつつ一緒のタクシーに乗せてさ。『大丈夫。何にもしないからちょっと寄ってけよ』って部屋に連れ込んで―――」
「連れ込んだ後は、またまた『大丈夫か』なんて言ってベットに運んで、気がつけば…みたいな、なし崩し的なパターンで押し倒してから、『俺にしろよ』と情熱的に口説こうかと思ってるんだ」
無表情になった俺を通り越し背後の壁を見つめ出した小宮は、グラスを手に取り静かに酒を飲み干した。
しばらくすると小宮は「それかな」とつぶやき、ぼんやりとした遠い目をする。
「会社だと二人きりでいることが多いから、せっかくならその時間を利用してみようかと」
切なそうにしたあと、俺へと視線を向けた。
「事務所にあるソファーに並んで座ってさ。適当な会話の合間に角野と見つめ合って。で、そのタイミングで倒れ込むようにギュッと抱きしめながら『お前が好きだ』と耳元でささやき―――」
「そのあと髪をゆっくりと優しく触りながら『俺のものになれ』と、甘く口説き落とすってのもいいよな」
付き合いを断られることなど全く考えていない発言の数々に、言い返す言葉が見つからず黙り込んでいると、
目の前の小宮が薄笑いを浮かべまた喋り出す。
「後はそうだな―――彼氏とデートしてる時を狙って、ちょい前に流行ったフラッシュモブで驚かせたあと、バラの花束を抱えた俺が『好きだーーー』と叫んで現れ、熱く押しの強い告白をするとか」
そこで小宮が俺の肩に手を乗せた。
「あ、そん時は坂上も参加してくれよな」
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