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「………モブ」
お前、踊れたか? と思わず真面目に心配すると、小宮の目が三日月型に笑い必死に何かをクッとこらえはじめた。
「ふ。坂上は本当に真面目ないいヤツだな。それにお前は彼女一筋のいい男、ブホッ、なんだから、もう早くな、ブホッ、結婚すればいいと思、ブホッ」
喋ってる合間合間になぜだかブホブホ吹き出していたが、最後まで言い終える前に我慢しきれなくなったのか、アッハッハッと爆笑し出した。
そして笑いながらも呆然としている俺の顔をしっかりと見据え、口元をヒクヒクさせながら言ってくる。
「大丈夫だ、角野を好きかも…ってとこ以外は全部冗談だから。というか今のとこ、角野をどうこうしようとは全く考えていない」
それから再び爆笑しながら、安心しろよという感じでまた俺の肩をポンポン叩いた。
――――そう、ですか。
「小宮? 冗談にならない時に冗談を言って、人の反応を楽しむのは性格がもの凄く悪い証拠だ。―――それにな、お前ならフラッシュモブ以外の口説きはやりかねないだろ!」
喋りながら徐々に本格的な怒りが沸いてきている俺に小宮は、気分が良さそうにフフフン…と片眉を上げた。
「そうかな? 俺は草食系だから襲ったり出来ないぞ。でもバラの花束抱えるとかは、ふっ、悪いが超絶似合ってしまうと思う」
「あ、フラッシュモブは坂上がする予定だったから怒ってるのか? いや、よければこのプラン使っていいから怒るなよ」
俺を楽しく盛大にからかえて、心の底から満足げにしている小宮にムムッと苛立ち、更に怒りがフツフツとこみ上げてくる。
「もういい! 何が草食系だ! ―――だけどな、 ”特別な女友達” のとこは本当だろーが!」
「あーその件は、なんというか…うん」
アハッてな笑いをして、小宮はそこらへんをごまかしたようだ。
「ごめん、ごめん。今日はおごるからさ」
口ではすまなそうに謝りつつも反省など一ミリもしていないのが丸わかりで、
座席の背にもたれ胸の前で腕を組み、機嫌よく目を細めて楽しそうに俺を眺めている。
またその表情が女心をくすぐるのか、
俺らの席近くにいる女性がそわそわとした動きを始め―――
(こんな男のどこがいいのか!)
見知らぬ女性に心で大きくツッコんだ後、気づけば真顔でつぶやいていた。
「小宮、俺はお前を許さない……」
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