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「絶対、社長に会わせたくないよな」
「はい確かに」
俺と角野の切なる願いもむなしく、
最新鋭のイケメンレーダーを搭載しているかのような、そんなイノシシ社長のアンテナがピピっと反応したのだろう。
あれから半月後、社長は見事に広瀬を発見した。
発見後は今までになく頻繁に彼がいる店舗へと足を運び、発見してから更に半月後の10月初め、社長は俺らに言った。
「広瀬さんと、お茶か食事に行きたいわね」
キャッ…てなハシャギ方をしている社長は、角野と俺が虚ろな目で見ている事にも気づかず、とても楽しそうで───
(てか、何がお茶だ食事だ。仕事をしろ、仕事を)
ただ今回は好かれることで仕事上の得をする相手ではなく、単なる取引先の若いイケメンなので、社長が貢ぎたくても相手にされるかどうかは怪しい。
しかし俺も広瀬の性格をよく知っている訳では無く、この先どうなるかの予想なんぞ全くつかないので、とりあえずしばらくは
社長の言動を生あたたかーく見守ることにしよう。
社長からビシバシ伝わってくるバカみたいに高いテンションを肌で感じながら、仕事をしている角野を頬杖をついて眺めた。
何もしないで機会が来るのを待つ。
そんなことを考えてから、すでに約一ヶ月が経っている。
当たり前だがそんなにすぐ彼氏と別れるはずもなく、それに俺の好感度を急激に上げるような出来事もそうそうは起らない。
(いっそほんとに結婚とか決まれば、諦めることができるか?)
いや待て。
籍を入れたと聞いただけならサーッと現実逃避するだけで済むかもしれないが、結婚式なんてされたら同僚として絶対に出席する羽目になるじゃないか。
それ考えて無かったな……結婚式か。……うわ、行きたくねー。
しかし角野のことは好きだが、どこまで本気なんだろうか?
実は、手に入らないから意地になってるだけだったりするとか?
―――お、しまった。どうする。
片思い期間が長すぎて、そこら辺がよく分からなくなってきたぞ。
だけどなんでこの会社には、社員が二人しかいないんだよ。
玉砕すらなかなか許されないとは、どういうことだ。
面倒になったと自分で一度投げたくせにグダグダとまた考え始めてしまい、
現状は一周まわって元に戻っている状態、だったりする。
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