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◇ ◇ ◇
敷宮道場もとい今日から住むことになるこの家は学校からもそう遠くはなく、商店街も徒歩五分程度の近場にある。
「久しぶりに見ると、でかいな」
「そう? ま、無理もないよね。最後に見たのって十年前くらいだっけ?」
その道場は見た目でもかなり広く見える。
何でも敷地は約百坪もあるそうだ。
表札には古ぼけた木に敷宮と達筆で彫られている。
入口の門をくぐると赤褐色の敷地、その左奥には大きくて立派な道場と右側に二階建ての民家があり、それらを繋ぐように飛び石が延びていた。
冬真は(と思ったが何故か愛染もついてくる)民家へ直行し呼び鈴のチャイムを押す。
「おい、じーさん?」
数回呼び鈴を鳴らして少し待ってみたが、一向に出てくる気配も返事すら無い。
「ん? 留守か? もしかして……居留守か?」
不審に思った冬真は訝し気な表情を浮かべ、引き戸の取手に手を掛けた。
その時だ――。
「スキ有りッ!」
「!? がっ……」
一瞬、冬真には何が起きたか分からなかったが、一つだけはっきりしている事がある。
「痛ッてェ!」
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