第01話:鏡の世界へ「V」

12/42
前へ
/1285ページ
次へ
 不意を突かれた事もあり横腹に大きなダメージを負った、と言う事だ。 上体を起こすと大分吹っ飛ばされていたみたいで、患部である脇を摩りながらふらふらと立ち上がる。 シャツをめくると脇腹に何かで突かれたように円く赤くしている場所が一カ所だけあった。 道理で痛いワケだ。 「少年、まだまだじゃな」  バシッ  背後から懐かしく、聞き覚えのある声が聞こえたと同時に頭に鈍痛が走る。 振り向けば、祖父が何を思っているのかニヤニヤしながら立っていた。 黒のバンダナを頭に巻き付け、今も右手の木製の棒で俺の頭をリズムよく叩いている。 ハゲてはいないが綺麗に全ての頭髪は白。 上は白、下は黒色のごく一般的な道着を着ていた。 「てんめぇ……とんだ歓迎の仕方だな」 「そいは冬真が避けきれば良かっただけの話じゃろが。相変わらず父親と負け劣らず鈍感じゃんねぇ。しかも引っ越し早々、こげんもじょか(=こんなに可愛い)女の子連れてぇ」  なるほど、ニヤニヤの原因は奴(愛染)か。 そう、冬真は察した。 駆け寄ってきた愛染が心配そうに声をかけてくる。
/1285ページ

最初のコメントを投稿しよう!

63人が本棚に入れています
本棚に追加