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「ちょっと冬真、大丈夫!?」
「別に……」
冬真は言葉とは裏腹に、腹の痛みを隠しきれていない様子。
声にも覇気がなかった。
「さてと、お前達、飯は済ましたんか?」
不意に話題を変える祖父に対し「んのくそじじい!」と、冬真は内心で暴言を吐く。
「まだ。何か作らねぇとな。どうせじじいは料理出来ねぇし」
「む……? 今何と? じいちゃんに向かって――」
「さっさと(腹を思っきし突いた事を)謝んねぇと飯作ってやんねぇぞ! って言ってんだ」
未だに頭を叩く棒を片手で払い退け、面と向かって怒鳴る様に謝罪を要求する冬真。
遊びには度が過ぎる程の痛さだったって事だ。
「す、スマンなさい」
「んだよそりゃ」
聞き慣れない単語に思わず耳を傾ける冬真だったが、この後、後悔と苛立ちに苛まれる事になる。
祖父と会話が成り立った事は、冬真の記憶上数える程しか無かったからだ。
「スマンとごめんなさいを組み合わせた造語じゃ。これで「済まない」よりも――」
「飯、いらねぇんだな?」
「済まんかった。許してくれい!」
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