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そうだった!
冬真はハッとした。
「武術以外は何もやらせるな」が、先に逝ってしまった祖母の口癖だった。
冬真は漸く祖父のダメさを思い出す。
毎回祖父自身が作る飯の味は壊滅的であり、それを半ば無理やり食べさせられた経験のある冬真は忘れる筈が無いのに――。
おそらく恐ろしく不味いモノを食べさせられたからか、頭の片隅にその記憶が保護を掛けられて封印されていたのだろう。
「ふふ、面白~い。そーいうトコは昔と全然変わっちょらんね!」
そのいざこざの風景を見て面白がる愛染。
「他人事だと思って!」と腹立たしくなるが実際他人なので、冬真にどうこう言えた義理では無い。
「愛染、ついでだ。メシ食ってく?」
「良かと? あざーす!」
そう冗談半分で言ってみただけの冬真だったが、愛染がイヤに食いついてくるのは予想外だった。
立ち話も何だか他人行儀なので、取り敢えず家に上がり昼飯を作る為に台所に立つ。
「んむ……」
とは言ったものの、冷蔵庫の中身は壊滅的にあり得なかった。
冬真が言葉を失う程だ。
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