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◇ ◇ ◇
警視庁から場所は移り鹿児島県守浜市。
その西端に位置する学校、市立守浜高等学校――。
暫くの間、静かだった校舎にも活気が戻った。
並木の桜が舞い、柔らかな陽射しがちらつく中を登校する生徒らがちらほらと見える。
それは新学期の始まりを意味していた。
どの教室でも久しぶりに会う級友とたわいない会話が続いている。
それは新入生も例外ではなく、入学式が執り行われる前の間、待合室である教室で各々コミュニケーションを図っていた。
「ねぇ、さっきからずっと机に俯いてばっかだけど、どしたの? あたしは愛染華。よろしく!」
声をかけられた少年がゆっくりと上体を起こして愛染を見ると、彼女は無垢な笑みを浮かべながら握手を求めていた。
背はさほど高くなく、パッチリとした二重の目が印象的である。
年頃の女の子らしく髪を染め、長めのヘアピンで前髪を留めていた。
引き下がる素振りが無いので取り敢えず握手に応じると、すかさず質問してくる。
「君、名前は? 出身ってどこ中?」
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