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「――敷宮冬真。新宿第一中。……何か用?」
間を置き冬真は眉間にシワを寄せて名乗る。
サラサラな黒髪が鼻にかかる程伸びているため、微かに見える細く長い眉毛。
ちらつく前髪からは眉毛と同じように鋭い切れ目が覗いていた。
「と……うま……冬真ッ!?」
「何だよ」
迷惑そうな表情はそのまま、声にもその感情が移ってしまったのだろう。
冬真の声色がガクッと下がった。
「もしかして、あたし達が五才くらいの時に引っ越してった、現警視総監の息子のあの冬真!?」
「だから、何?」
彼が肯定の返事をした途端に更に目を丸くして驚く愛染。
一体それが何なのだろう、と冬真は思った。
「ほら、あたしだよあ・た・し! 愛染銭湯の娘の」
「せんとう? セントウ……銭湯……あぁ、アレか」
「アレって、ひっどいなぁ。てか久しぶりだね! 背ぇ伸びたと?」
「……別に」
「もう、どうしてそんな冷たかと? 昔はもっと優しかったとに……」
「あーも、昔ん事なんか忘れた。あっちン行っちょれッ! って、あ――」
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