第01話:鏡の世界へ「V」

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「――敷宮冬真(しきみやとうま)。新宿第一中。……何か用?」  間を置き冬真は眉間にシワを寄せて名乗る。 サラサラな黒髪が鼻にかかる程伸びているため、微かに見える細く長い眉毛。 ちらつく前髪からは眉毛と同じように鋭い切れ目が覗いていた。 「と……うま……冬真ッ!?」 「何だよ」  迷惑そうな表情はそのまま、声にもその感情が移ってしまったのだろう。 冬真の声色がガクッと下がった。 「もしかして、あたし達が五才くらいの時に引っ越してった、現警視総監の息子のあの冬真!?」 「だから、何?」  彼が肯定の返事をした途端に更に目を丸くして驚く愛染。 一体それが何なのだろう、と冬真は思った。 「ほら、あたしだよあ・た・し! 愛染銭湯の娘の」 「せんとう? セントウ……銭湯……あぁ、アレか」 「アレって、ひっどいなぁ。てか久しぶりだね! 背ぇ伸びたと?」 「……別に」 「もう、どうしてそんな冷たかと? 昔はもっと優しかったとに……」 「あーも、昔ん事なんか忘れた。あっちン行っちょれッ(向こうに行ってろッ)! って、あ――」
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