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「起立、礼」
出席番号一番の男子生徒が号令を掛ける。
入学式の後に教室に戻り、漸(ようや)くホームルームが終わりを告げたのだ。
昼前とあってか直ぐに帰る生徒が多かった。
冬真も当然その一人だ。
「ねぇ、引越先の家ってやっぱ前の家?」
席に座って帰りの支度を始めると、既に荷物を纏めた愛染が訊いてくる。
「いや、敷宮道場。どうせじいさん一人だろうし」
冬真の父親である敷宮光秋は警視総監。
その彼の父親、つまり冬真の祖父は鹿児島で武術を教えている。
専門は杖術であり、当然ながら師範。
武家家系に生まれた冬真も例外では無く、幼い頃に洗礼という名の「祖父の稽古」を受けた過去を持つ。
ただ、斜に構える冬真が祖父の下を離れていた期間でも稽古を継続していたのだから驚くべき事だ。
彼にとって武術は、それ程までに熱心に打ち込めるモノだったのだろう。
「え? まじッ!? そんじゃあウチと超近いじゃん」
「? 銭湯ってその辺だったか? まぁ、いいや」
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