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煉は冬真に目で訴えかけると、元来た獣道へと顎をしゃくった。
大方、早く引き返すぞ、とでも言いたかったのだろう。
踵を返すと足早に獣道へと直行する煉の背を追い、冬真は駆け足を踏んだ。
と――その時だ。
ドォォオオオオンッ!!!!
「なッ!?」
モノ凄い大きさの轟音は唐突に轟き、二人の鼓膜を激しく震わせる。
同時に空気の波が押し寄せるよう、見えない“圧”がビリビリと伝わってきた。
更に時間差で木々を縫うように風に運ばれた“ニオイ”は、冬真達の鼻腔をチクリと刺す。
その独特なニオイの正体は、おそらく硝煙――花火など、火薬を発火させる事によって生じる煙――だろう。
頻繁には受け付ける事の無い刺激的なニオイを不本意ながらも体に取り込み、不快そうな冬真は眉間にシワを寄せた。
先程の轟音を聞く限りでは、音の発生源は冬真達の居る位置から相当に近い。
――その上、轟音の発生した方角も、硝煙が漂ってきた方向も同じ、みたいだな。一体、何が起きているのやら……。
冬真は首筋に掌を添えながら、森の中央へと視線を向けた。
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