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夏休みの旅行中に“偶然”にも混鏡世界という名の天災に遭うなんて。
まして、一般人を十数人も含んだ上で厄介ごとに巻き込まれるなんて……はっきりと言って「運が悪い」だけでは説明が付かない。
何か仕組まれているのではないか、なんて――何の根拠もないのに疑いの心さえ芽生えて来た。
――陰謀論を考えるなんて、末期だな。
冬真は自嘲気味に乾いた笑いを一瞬だけ浮かべると、すぐに表情を切り換える。
何がどうであろうと当初の目的であるこの島の調査をすれば、自ずと混鏡世界の原因も究明出来る筈なのだ。
「ノート、そこに居るンだろ?」
「ほおぅ。妾が主の傍にいるなどと、よぅよぅ気が付いたの? 褒めてやろうぞ?」
隣で歩幅を合わせるノートは唇に人差指を宛がい、満足気に口角を少しだけ上げた。
先行する煉の背中に視線を向けつつ、距離が離れているので普通の声量で二人は会話を続ける。
「……。そんな状況じゃねぇ事は知っている筈だ。お前の力、貸してくれ」
「ふふっ、構わぬよ。ただし以前にも言うたが――……」
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