第09話:真夏の孤島「H」

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夜刃穏杖(げんそう)の使用条件だろ。分かっている」 冬真の第三の幻装(げんそう)である夜刃穏杖(やいばのおんじょう)は少々異質である。 杖鎖刃・氷蒼燕架と同様に昼夜問わず使用する事は可能であるものの、その性能は使用者と夜更けの度合いに比例するという特異性があった。 特異性の主な要素は「刃渡り・殺傷性・剛性・透過性」の四つである。 これらの性能は一日の内で正午に最も低くなり、言い方を変えれば「使い物にならない」といっても良い。 反して深夜で使用する場合は、最も真価を発揮する代物である。 これが夜更けの度合いに比例するという、特異(やっかい)な性質の正体だ。 そんなもの、夜刃穏杖(やいばのおんじょう)が発現した時から()っている。 識っている上で使うのだ。 「ふん。分かっておるならよい。じゃが、他の者供は(わらわ)が主の幻影(ファントム)だという事を知らぬのではないか? まして以前、主の「死神」の姿が報道され、黒杖姿の妾が公に晒されておる。何故、死神が使っていた黒杖を主が扱っているのかという「不審の目」は避けられんぞ?」
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