第09話:真夏の孤島「H」

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近付ける程に幻核(コア)の鼓動は早くなり、バイクのアイドリング音のようなリズムを刻み始めた。  ドッドッドッドッ……――。 逆に遠ざければ鼓動は小さく、ゆっくりと治まっていく。 あまりにも異質な状況に陥った翠子は、気が動転してしまいそうであった。  ――な、なに? 何が起こっているというの? まるで戦車と幻核(コア)が共鳴でもしているかのような……。と、とにかく、この戦車に幻核(コア)を近づけてはいけない! そう思った彼女は、すぐさま引き返そうと踵を返す。 「あっ……」 けれども自身のスカートの(すそ)を踏み付けてバランスを崩す翠子は、戦車目掛けて倒れ込んでしまった。 反射的に手を突こうとしようとも運動が苦手な彼女としては、やはり他人とはワンテンポ遅れてしまう。 結果として、顔面から戦車の装甲に突っ込んでしまったワケだ。 さながら“びたーん”という効果音が妙にしっくりしてしまうその様は、あまりにも痛々しい。 「ぉ、おぉ……おぉぉおぉ……」 翠子はその場で小さく(うずくま)り、あまりの痛さに悶絶してしまう。 そして涙を目尻にいっぱい溜め込みながら、恨めしそうに戦車を見やった。
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