63人が本棚に入れています
本棚に追加
するとどうだろう。
戦車の排気口からは豪快な音を立てて、黒い排気ガスが噴出したのだ。
「えっ……!?」
突然の出来事に動揺した翠子は、びくりと小さく肩を揺らす。
そしてディーゼルエンジンの騒々しいアイドリング音が耳元で響いたため、思わず手で耳を塞いでしまった。
一世代も二世代も古いものである為、その音は最早騒音レベルである。
隣に居たアリアンロッドも翠子と同じように、耳に両手を強く押し付けている。
二人の顔には、至極不快な表情が浮かべられていた。
一体どういった原理でそうなってしまったのかは全く以て理解できないのだが、どうやら戦車のエンジンが起動してしまったらしいのだ。
翠子は鼻を擦りながらもその場に立ちあがり、自身の手に握る幻核に視線を落とした。
「っ? 元に戻っている……?」
先程までの幻核の異常な鼓動は止まり、燃える様な真っ赤なデザインも通常の緑色に戻っている。
幻核の異様な発熱も治まり、完全に元に戻っているようであった。
――まったく。今の現象は一体、なんだったのでしょうか。と、とにかく、皆に知らせなければ!
「今あった事を皆に伝えなくては。行きましょう、アリアンロッドさん」
最初のコメントを投稿しよう!